南の島で見たいお魚ベスト20くらいのアンケートをとれば、おそらくランクインするであろう物のひとつ、バラクーダ。あなたは、縞模様がたくさん入っていて、ひれの黒っぽい魚が渦をまいているのを見て、「バラクーダを見た!!」と思い込んでいませんか? 残念ながら、気のせいだったかもしれません。それは、オニカマス(本来のバラクーダ)ではなく他の大型のカマスである可能性がかなり高いのです。 オニカマスのバラクーダという呼び名は、学名Sphyraena barracudaからきています(ちなみに、学名の由来は不詳です)。他のすべてのカマスにはもちろん別の種小名(学名の2語目)がついているため、本来 他のカマスをバラクーダと呼ぶ根拠はありません。とは言え、英語名では(小型のものを含め)多くのカマスが「〜 barracuda」と呼ばれることから、日本語でも(特に大型のカマスを)バラクーダと呼ぶことが多く、これが本来のバラクーダであるオニカマスとの混乱の元になっています。
日本人ダイバーにとって縁の深い中部西太平洋でオニカマスと混同しやすい大型のカマスは、ブラックフィンバラクーダ、オオカマス、ビックハンドルバラクーダの3種です。 ■ どこが違うの?それら大型のカマスは、体型が似ているので間違いやすいことは確かです。ニセクロスジギンポとホンソメワケベラほどは似ていませんが、ヨスジフエダイとロクセンフエダイくらいは似ています。しかし、実際に海で見たことがないとしても見分けるためのヒントをいくつか知っていれば、オニカマスと他種を見間違えることは少ないでしょう。
大型のカマスが渦を巻いている写真を見かけることがあると思います。そのとき「オニカマスは渦を巻くような群れは形成しない」と知っていれば、簡単に区別できます。オニカマスはたいてい単独か数尾であまりかたまらず生活しているようで、せいぜい数十尾の群れを成すこともあるようですがまれです。 個体の体側を見ると、オニカマスは縞模様が薄い銀色で、老成魚では胴体に小さな斑点が見られる場合があります。オニカマスの成魚は他種よりもやや大きく、普通は1m前後か、それ以上になることも珍しくありません。 そして下の写真のように、尾びれ、第2背びれ、臀びれがそれぞれ特徴的です。「黒っぽいひれにホワイトチップ」と表現することもありますが、どちらかというと黒い部分が目立つような気もします。この特徴は、他のすべてのカマスに見られません。
オニカマスと他種、あるいは他の大型のカマスの間のより正確な見分け方は、別ページで説明する予定です。 ■ 呼称がややこしい魚 カマス以外で名称に「カマス」と付く魚の代表的なものとして、カマスサワラ(サバ科)という大型の魚がいます。カマスに体型が似ているサワラ(サバ科)に近い仲間ですが、カマスサワラ属の一属一種です。漁業的にはオキザワラと呼ばれる場合が多いようです。カマスサワラは体側の縞模様が不規則で、第1背びれが前後に幅広いので、カマスとは簡単に見分けられます。
ヨコシマサワラは、厳密にはカマスサワラとは別のサワラ属で、より胴の太い印象のある魚です。 ダイバーにはあまり一般的ではありませんが、バラクータと呼ばれる魚がいます。オオシビカマスなどと呼ばれることもあるようですが、ややこしいことにこれも漁業的にはオキザワラと呼ばれることがあるようです。ただし、こちらはクロタチカマス科の比較的深い海にいる魚で、カマス(カマス科)やサワラ(サバ科)の仲間ではありません。バラクータは言ってみれば「偽物のオキザワラ」です。
■ バラクーダに似た魚いろいろ インターネット上でカマス科の写真も多数掲載されていますが、種の区別が混乱しているものが多数見受けられます。最も多い混乱はブラックフィンバラクーダとオオカマス、次がオニカマスと他種の区別です。前者の見分け方についても、別ページで詳しく解説する予定です。 また、一般的な日本語名と英語名の対応が曖昧になっている種もあり、例えばダルマカマスやオオヤマトカマスがこれにあたります。また、(ブラックフィンバラクーダのように)日本で見られる種でも一般的な日本語名が存在しない種もあります。 以下に、日本のダイバーに縁のありそうな、主なカマス科の種と、ここまでに名前の出た他種の日本語名、英語名、学名の対応を挙げておきます(すべてサバ亜目)。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2001年初出、2002年1月・2月改訂、2003年2月改訂、2008年6月大改訂 |